OSCEトライアル

薬学共用試験OSCEの円滑な実施に向けて、平成16年10月に日本薬学会薬学教育改革大学人会議OSCEトライアル委員会が発足し、これまでにOSCEミニトライアル(第1回:平成17年12月24日、東京薬科大学、第2回:平成18年2月27日、武庫川女子大学)や各大学におけるトライアルを通じて、OSCEの課題内容や実施体制に関する議論を深めてきた。
平成18年8月、日本薬学会薬学教育部会とOSCEトライアル委員会の共催で、第3回薬学教育フォーラム「医療人養成教育における薬学共用試験OSCEの重要性」が開催され、今後の全国の薬学部・薬科大学におけるOSCE実施に関するコンセンサスや協力体制を構築するために、全国の薬学部・薬系大学の委員から構成されるOSCE実施委員会が薬学共用試験センター内に発足した。
このような経緯を踏まえて、平成19年度に全国の薬学部・薬科大学においてOSCEトライアルを実施するための必要事項を協議する場として、薬学共用試験センターOSCE実施委員会および日本薬学会薬学教育改革大学人会議OSCE内容・体制委員会(以下、合同委員会)が、平成18 年12月28日(木)に共立薬科大学で開催された。合同委員会は、全国の薬学部・薬科大学が学生定員規模のOSCEトライアルを行うことを平成19年度の目標に活動を行った。
OSCEトライアルを適正に行うために、合同委員会は、平成19年4月15日(日)、京都薬科大学において「平成19年度OSCEトライアルにおける標準課題の提案と実施概要の説明会」を実施した。その後、7月22日(日)には、名城大学にて「第1回薬学共用試験OSCE評価者養成伝達講習会」、8月21日(火)には、同じく名城大学にて「第2回薬学共用試験OSCE評価者養成伝達講習会」、10月14日(日)には、神戸学院大学にて「薬学共用試験OSCE標準模擬患者(SP)養成講習会」を実施した。さらに、平成20年3月29日(土)には、平成20年度に向けて、共立薬科大学にて「第3回薬学共用試験OSCE評価者養成伝達講習会」を行った。また、講習会の実施と並行して、OSCEの課題集、マニュアル、およびQ&A集の作成・改訂を行い、評価方法および運用に関する一層の周知を図った。
平成19年度のOSCEトライアルは、平成19年4月から平成20年3月にかけて実施された。一施設で複数回のトライアルを実施したケースもあり、実施総数は67施設75トライアルであった。実施状況を(表1)に示す。また、OSCEトライアルを実施した大学に対しては報告書の提出を依頼した。なお、OSCEトライアルの詳細な実施結果および評価に関しては、平成19年度薬学共用試験センター報告書に記載されているので、ご覧いただきたい。

表1. 平成19年度薬学共用試験OSCEトライアル実施状況(平成20年3月現在)

実施月

大学名



19
4月
日本大学、京都大学、神戸薬科大学
5月
新潟薬科大学、徳島大学
6月
北海道薬科大学、北里大学、帝京大学、名古屋市立大学、大阪薬科大学、
徳島文理大学
7月
明治薬科大学、昭和薬科大学、東邦大学、東京理科大学、北陸大学、
武庫川女子大学、九州大学、第一薬科大学
8月
京都薬科大学
9月
東北薬科大学、昭和薬科大学、東邦大学、静岡県立大学、富山大学、
岡山大学、徳島文理大学香川校
10月
東北大学、同志社女子大学、近畿大学、広島国際大学、長崎国際大学
11月
共立薬科大学、千葉大学、東京理科大学、帝京平成大学、岐阜薬科大学、
神戸学院大学、就実大学、徳島文理大学、大阪大谷大学
12月
青森大学、星薬科大学、東京薬科大学、武蔵野大学、日本大学、国際医療福祉大学、同志社女子大学、大阪大学、摂南大学、神戸薬科大学、
徳島文理大学香川校、広島大学、福岡大学、長崎大学、熊本大学


20
1月
福山大学
2月
北海道大学、北海道医療大学、昭和大学、城西国際大学、千葉科学大学、
帝京大学、愛知学院大学、金城学院大学、京都大学、九州保健福祉大学、
松山大学
3月
奥羽大学、城西大学、日本薬科大学、金沢大学、名城大学、崇城大学

以下に、平成20年3月10日までに提出された報告書(42施設、45トライアル分)の解析結果の概要を示す。
対象学生は平成19年度の学部2、3、4年次生および大学院1年次生であり、2年次生:1施設、3年次生:22施設、4年次生および大学院1年次生:20施設で実施された。対象学生数は計6,755名、実施学生数は計5,092名であった。実施率は75.4%であり、各施設の実施率の平均は77.9 ±29.6%であった(表2)。

表2. トライアル対象学生数と実施学生数

トライアル数
施設数
対象学生数
(名)
実施学生数
(名)

2年次生

1

1

122

 17

3年次生

23

22

3,688

3,424

4年次生+大学院生

21

20

2,945

1,651

総計

45

43

6,755

5,092

1トライアルあたりの平均実施課題数は5.2±2.5、平均ステーション数は4.7±1.5、平均レーン数は4.7±2.9であった。また、平均実施日数は1.2±0.8日であり、45トライアル中42トライアルは1日で実施していた。平均実施時間は7.6±3.2時間であった。
参加者として、評価者が総計3,149名(教員2,097名、薬剤師1,052名)、スタッフが総計2,466名(教職員1,480名、大学院生等986名)、また、SPが総計694名(教員281名、職員112名、SP研究会など189名、大学院生を含む学生37名、その他77名)であった。

実施された課題の総数は228課題であり、標準課題、標準課題の一部変更、および新規課題に区分して、実施状況の調査を行った。領域1(患者・来局者応対)は36課題が実施され、うち標準課題の割合は66.7%であった。領域2(薬剤の調製)は76課題が実施され、うち標準課題の割合は、2-1-1(散剤)において70.7%、2-2-1(水剤)において65.2%、2-3-1(軟膏)において57.1%であった。領域3(調剤鑑査)は44課題が実施され、うち標準課題の割合は47.7%であった。領域4(無菌操作の実践)は32課題が実施され、うち標準課題の割合は4-1-1(手洗い・手袋)において55.6%、4-2 – 1(注射剤混合)において75.0%であった。領域5(情報の提供)は40課題が実施され、うち標準課題の割合は、5 – 1 – 1(薬剤交付)において67.6%、5-2-1(病棟)は0%であった(図1)。

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